BL小説に女は出てこないほうが幸せ
私は女が関与するBLが好きだった。
昔書いていた創作のBL小説には女を出していたし、なんだったらチャラ男×チャラ男のノンケカップルが好きだったから女の存在は必要不可欠だった。
同性愛に理解が深い女友達でも、実は自分も同性愛者な女でも、メインキャラの姉妹でもなく、ただ純粋に彼らに恋をするBL界の女キャラが好きだった。
でもいつだっただろう。
今は書籍化されているpixivにあがっていた女が主人公のBL漫画だったか、それともお世話になっている創作BL小説サイトのこれまた女が主人公の長編だったか。
どちらも女は受けと攻めのいずれかが好きだった。漫画の方は色んな事情の末結婚したが旦那はずっと好きな男が好きだったし、小説の方は元々ホモカップルの片割れが好きで色んな事情の末ホモカップルの近くにいて二人の理解者に落ち着いてたが女は物語の終結までずっとその男のことが好きだった。
めちゃくちゃ好きな設定なのに、何故か読み終わったあとすごく悲しかった。男たちは幸せなのに女はいまいち幸せそうじゃなかったから。
当たり前だ。BLなんだから。
そこから女の関与しない作品を見ることが増えた。
当て馬は男のほうが見るのが楽だった。
男だけで完結するBLが好きになった。
そして今朝、攻めが女を妊娠させて二人は別れた。
嘘でしょって、いやこの作者さん結構どんでん返し系の人だから多分大丈夫でしょって、より戻すよ多分って最後まで読んだ。
よりは戻んなかった。
なんだったら違う男に好きって言ってた。
ホント勘弁してよって思った。
その話は二部構成で、学生時代の一部とそれから10年後の社会人になった二部。
深夜に読み始めて明日も出勤だって言うのに朝まで読み続けてこれだ。
いや朝まで読んだのは私の勝手なんだけど。
それだけのめり込んで読んでしまった。
ただ二部ではその後の二人の幸せそうな姿が見たかっただけなのに、攻めは女を孕ませていた。
いやなんで????
心変わりでもなく、ただの前後不覚になるまで飲んだ夜の過ちだった。
いや、待って????
学生時代の二人を思い出す。
粗暴なはずの攻めが受けの頭を撫でる。
その優しい手つきの理由が知りたかった受け。
いつだってさり気なく攻めは受けを助けていたし、受けの未来を本人より考えて行動してた。
自分は酷いことをしたからと、報われなくてもいいからと受けの幸せを願ってた。
そんな攻めに惹かれて、偶然攻めのことを好きだと第三者に伝えているところを聞かれてしまう。
その時の思わず零れた嬉しそうな笑顔が忘れられない。
「俺の事好きなの?」って。
まさかの事態すぎて言葉を失う受けを見て「はは」って笑ったんだよ。
「俺も好きだよ」って言われて、こんなに幸せなことは人生で初めてだと泣いた受け。
あのシーンで全てが終わればよかったのにね。
私は二人が別れる続編を見たかったわけじゃない。
ていうか別れるにしても、相手は男がよかった。
女って、子どもって。
もう攻めが受けのもとに戻ることはありませんって決定打をつきつけないでほしかった。
それでもいつか二人が戻る未来の妄想の余地すら奪われた。
なんで別れた数年後に偶然街で攻め家族の仲睦まじい姿を見て受けが泣くんだ。
なんでそんなシーンを見なきゃいけないんだ。
なんで受けの新しい男に呼び出された攻めの「彼といた10年が俺の人生の中で一番輝いてる」って言葉を聞かなきゃいけないんだ。
なんでお前、まだ好きなんだよ。
なんでお前子どもいるんだよ。
なんでお前あの夜酔っ払ったんだよ。
なんで二人のハッピーエンドが見れなかったの。
まぁいいよ。
受けは絶対に幸せになる。
攻めと出会う前に好きだった初恋の人と結果結ばれたのだ。
受けは絶対に幸せになる。
よかったね。
スマホぶん投げた。
時刻は朝の6時前だった。
何回でも言う。
この攻めの相手が男ならここまでダメージはない。
悲しいけど、別にここまでじゃない。
でも女はダメだ。
簡単に結婚できる。子どもができる。
それってめちゃくちゃいいことだけどBLの世界じゃしんどすぎる。
女が関与すると幸せな気持ちになれない。
もっとずっと苦しい。
私はもう彼女たちのいるBLを楽しめない。
本当に頼むから、妊娠はオメガバースだけにして。
そんなBLの世界であれと思った朝だった。